青空文庫ビューアー

メランコリア

メランコリア

三富 朽葉

外から砂鉄の臭ひを持つて来る海際の午後。

象の戯れるやうななみ呻吟うなり

畳の上によこたへる身体からだ

分解しようとんでまはる。

私は或日珍しくもない原素に成つて

重いメランコリイの底へ沈んでしまふであらう。

えたいの知れぬ此のひと時の衰へよ、

身動きもできないしびれが

筋肉のあたりを延びてゆく……

限りない物思ひのあるやうな、むなしさ。

かがやける光線につながれて

目まぐるしい蝿のひとむれめぐる。

私は或日、砂地の影へ身を潜めて

水月くらげのやうに音もなくけ入るであらう。

太陽は紅いイリュウジョンを夢みてゐる、

私は不思議な役割をつとめてるのではないか。

無花果樹いちじくの陰の籐椅子とういすや、

まいまいつむりのもろい殻のあたりへ

私は蝿の群となつて舞ひに行く。

壁の廻りのまぎれ易い模様にも

ちよつとしりを突き出して止つて見た。

窓の下に死にゆくやうな尨犬むくいぬよ。

私はいつしかその上で渦巻き初める、

………………

………………

砂鉄の臭ひのものういひとすぢ。