火の記憶
とある家の垣根から
蔓草がどんなにやさしい手をのばしても
あの雲をつかまえることはできない
遠いのだ
あんなに手近にうかびながら
とある木の梢の
終りの蝉がどんなに小さく鳴いていても
すぐそれがわきかえるような激しさに変る
鳴きやめたものがいつせいに目をさますのだ
町の曲り角で
田舎みちの踏切で
私は立ち止つて自分の影を踏む
太陽がどんなに遠くへ去つても
あの日石畳に刻みつけられた影が消えてしまつても
私はなお強く 濃く 熱く
今在るものの影を踏みしめる
火の記憶
とある家の垣根から
蔓草がどんなにやさしい手をのばしても
あの雲をつかまえることはできない
遠いのだ
あんなに手近にうかびながら
とある木の梢の
終りの蝉がどんなに小さく鳴いていても
すぐそれがわきかえるような激しさに変る
鳴きやめたものがいつせいに目をさますのだ
町の曲り角で
田舎みちの踏切で
私は立ち止つて自分の影を踏む
太陽がどんなに遠くへ去つても
あの日石畳に刻みつけられた影が消えてしまつても
私はなお強く 濃く 熱く
今在るものの影を踏みしめる