青空文庫ビューアー

暗い時間に

暗い時間に

片山 敏彦

空には

燃える秋の星がある。

地には天に向つて立つけやきがある。

葉の階層――つよみき。年輪の多いあらい幹。

彼は、昼と夜、空間のひろがりの中で

思想である。流出である。

心に

不安がある。獣と共通な欲望がある。死を慕ふ憂欝がある。夢の記憶の破片がある。

すべての感激に立ち上つて、それに交り込み

限界の輪廓を打ち砕きたい動律と火流とがある。

どこへ行くのか? 今それを思はない。

僕は

秋の夜の、目がぐらぐらするほどな

星の無数の穴を見上げて立つ。

一つの胸が、自分にある。