青空文庫ビューアー

或る時の詩

或る時の詩

片山 敏彦

心のあらしが今去つたところだ

熱い嵐の中で、つめたい心がこゞえて

獣になつて魂の野を

走りまはつてゐた。

火にかれながら、一つの氷が

曇り日の天に向つて叫んだ。

心の嵐が今去つたところだ。

疲れた氷の火が静かにとけて

秋の曇り日の天の下に

春のやうなひかりを感じる。

やつと見つけたお母さんの乳房に

泣きじやくりながら、かじりつく赤ん坊に

私のこゝろは似てゐると思ふ。