青空文庫ビューアー

古賀 春江

沢山な窓のある家、

一つ一つの窓から顔が出てゐる。

顔には地図が描いてある。

みんなの地図が読める、

鳥籠も描いてある、花もあり、コップも、望遠鏡も、並ぶ顔、水筒、

霧、黎明とパイプも確実につながつてお互の陰翳を持つてゐる。

痙攣する避雷針の窓からまた一つの顔を見ないか、

揺れる、揺れる、椅子が、星が、

黒い夜の絵具は沈黙して語らない――その後の顔等に就いては。

今はただ明るく揺れる顔がある。