青空文庫ビューアー

途中で

途中で

中野 鈴子

わたしは途中で一人の女とすれちがった

女のかおは白粉と紅で白く赤く美しかった

背が高くふっくら円かった

年は二十三四

そして藤色チリメンの長袖

厚いフェルト草履の大股でトットッと歩いて行った

それは大変に自慢そうで

からだ全体が得意で一ぱいのようだった

わたしは洗いざらしの浴衣を着て

あおじけた顔をうつむけて通りすぎた

わたしは顔をうつむけて通りすぎた

そうしてわたしは振りかえった

振りかえった時

わたしの胸はわくわくとこみ上げた

いくらでも威張りなさい

いくらでもおけつを振りなさい

あなたがそうしてじゃらじゃらしている間に

わたしたちが何をしようとしているか

何処に向かって着々としているか

高慢ちきな娘よ

この陽に焼けたゆがんだ顔で

みすぼらしいわたしたちが何をしでかすか

何をしでかすか

振りかえった時

わたしの胸はわくわくとこみ上げた

わたしの胸は色あせた浴衣の中で焼けた