青空文庫ビューアー

人面凝視

人面凝視

今野 大力

ふとして眺むれば

彼処かしこに笑めるは一人の不可解なる精霊の所有者である

われは今その面を見つつ想う

唇……

おおそは紅の渕に囲われし底知れぬ沼である

 鼻……

おおそはまろみあるエジプトのピラミットである

 眼……

おおそはうるおい耀く黒曜石の玉を秘めし二つの湖水である

 眉……

おおそは湖水をめぐりて小丘の上に繁れる林である

おおなめらかに広き無毛の原を過ぎ行けば

彼方は千古の密林である。