青空文庫ビューアー

北海の夜

北海の夜

今野 大力

旗がしきりにゆれている

ハタハタと、又ハタハタと

時には風が吹いて来て

ゴトンと音を立ててゆく

外はほんとに暗いのだ

自分よ、或る夜の事を思い出せ

そしてぞうっと身ぶるえせ

今夜の雪は青白い

すごい黒さが沁みている

海の妖婆が踊るよな

暗い恐ろしい夜となる

日本海と太平洋の沖の方に

何か変りはないだろうか。

海辺の街の病める友は

こんな夜なら寂しかろう

母がはなれているのさい

悲しくなって来るだろう

窓の近くに横たわり

眠りもせずに、うつうつと

ものを思えるその時は

そうっと窓の近くにて

海の妖婆が笑うだろう

私も自分がさびしくて

忘れようにも忘られず

ぞうっと身ぶるえするのだよ。

一〇・三・四稿