青空文庫ビューアー

ある夜、ある宵

ある夜、ある宵

今野 大力

ある夜は

くらやみの中に

妻をよびよせて

話すことすべて狂人の如く

    *

来年の三月に死ぬと

自分のいのちを予言して

今日すいみん剤を多量にのんだと

いい、胸の苦るしさを訴えて

妻を涙ぐませる

うそのような真実に近いような

ある日の宵

    *

しゃべるとつかれてくるに

しゃべること

自分でよせと思いつつも

たわごとの如くしゃべくる宵