青空文庫ビューアー

無題

無題

富永 太郎

たゞひとり黎明の森を行く。

風は心虚しく幹のあはひを翔り、

木々はみなその白き葉裏をかへす。

樹の間がくれに、足速あしばや

白き馬を牽きゆくは誰ぞ。

道のの 歯朶の群をのゝけり。

かゝるとき、湿りたる岩根を踏めば

あゝ、わが出しやうの記憶甦へる。