青空文庫ビューアー

泣けよ恋人

泣けよ恋人

ダンテ アリギエリ

泣けよ、戀人こひびと、神の身の「愛」の君だに、

愁歎しうたんのいはれをりて泣き入りぬ。

「愛」はかなしへ難く、いらつめたちの

雙眼さうがんに溢るる涙、眺めたり。

忌々ゆゝしき「死」の大君おほぎみあてなる人も

はゞからず、さすがに徳を避けたれど、

なべての人が、たをやめのほまれとふもの、

めぐしくも、こぼちたるこそ無殘むざんなれ。

聞けよ、諸人もろびと、「愛」は今、このたをやめを

褒めたたふ。見ようつそ身にあらはれて、

眠れる如きかんばせの上にあらずや。

折ふしは天頂てんちやう高くうちあふぎ、

かくてあてなるたましひのゆくへやむる、

ちりの世のにごりに染まぬたましひの。