青空文庫ビューアー

サバトの門立

サバトの門立

ベルトラン ルイ

女は夜半に起きて燭を點じ泥を取つて身に塗り、さて呪文を唱ふれば、身たちどころにサバトの集會に向ふ。

ジァン・ボダン「方士鬼にかるる事」

 あつものを吸ふもの十二人、各の手にある匙は亡者の前腕の骨である。

 炭火は赤く爐に燃え、燭は煙つてだらだらと蝋を流し、皿の中からは春さきのどぶのやうなにほひが立つ。

 マリバスが笑つたり、泣いたりすると、やれヸオロンの三筋の絲を弓でくやうなうなりが聞える。

 然し一人の兵隊はそら恐しい事だが、机の上に蝋燭を立てて魔法の書を開け廣げた。本の上には火に迷つて來た蟲が跳ねてる。

 此蟲が飛び跳ねてゐる最中、毛むくじやらのふくれた腹の處から、蜘蛛が出て來て、幻術の書のへりを這つて行く。

 而も此時方士も魔女も既に煙突から飛び出してゐたのだ。或は箒木、或は火ばさみに跨り、そしてマリバスは揚鍋あげなべに乘つて出ていつた。