青空文庫ビューアー

白鳥

白鳥

マラルメ ステファヌ

純潔にして生氣せいきあり、はたうるはしき「けふ」の日よ、

いきほひたけ鼓翼はばたき一搏ひとうちくだき裂くべきか、

かの無慈悲なる湖水の厚氷あつごほり

飛び去りえざりける羽影はかげの透きて見ゆるその厚氷を。

この時、白鳥は過ぎし日をおもひめぐらしぬ。

さしもはえ多かりしわが世のなれるはての身は、

今こゝをのがれむすべも無し、まことのいのちある天上のことわざを

歌はざりしとがめか、みのりなき冬の日にもうれへは照りしかど。

かつて、みそらのはえばうじたるとがによりて、

永く負されたる白妙しろたへ苦悶くもんより白鳥の

くびのがれつべし、地、そのはねはなたじ。

いたづらにその清き光をこゝにたくしたる影ばかりの身よ、

むなくて、白眼はくがんに世を見下げたるひやき夢のなかぢゆうして、

やうも無き流竄るざんの日に白鳥はたゞ侮蔑のきぬまとふ。