青空文庫ビューアー

郷愁

郷愁

仲村 渠

友よ 肩をならべて街へゆかう

質屋をだして外套は僕らの肩によいおもさ

友よ 腕をくめ

街は霧だ

燈火の美しくなる十二月

何だらう 僕らを呼んでゐるものは?

友よ 新しい気流が渡つてるにすぎぬのだよ 街のうへを

何だらう 僕らの顔に匂つてくるものは?

気弱い友よ

ナフタリンの玉がころがつてるにすぎぬのだよ かくしの底に

霧は僕らの肩におりるやうす

友よ 友よ 話してゆかう

声だかに燈火のあひだ霧のしたを。