青空文庫ビューアー

演習一

演習一

竹内 浩三

ずぶぬれの機銃分隊であった

ぼくの戦帽は小さすぎてすぐおちそうになった

ぼくだけあごひもをしめておった

きりりと勇ましいであろうと考えた

いくつもいくつも膝まで水のある濠があった

ぼくはそれが気に入って

びちゃびちゃとびこんだ

まわり路までしてとびこみにいった

泥水や雑草を手でかきむしった

内臓がとびちるほどの息づかいであった

白いりんどうの花が

狂気のようにゆれておった

ぼくは草の上を氷河のように匍匐ほふくしておった

白いりんどうの花が

狂気のようにゆれておった

白いりんどうの花に顔を押しつけて

息をひそめて

ぼくは

切に望郷しておった