青空文庫ビューアー

行軍二

行軍二

竹内 浩三

あの山を越えるとき

おれたちは機関車のように 蒸気ばんでおった

だまりこんで がつんがつんと あるいておった

急に風がきて 白い雪のかたまりを なげてよこした

水筒の水は 口の中をガラスのように刺した

あの山を越えるとき

おれたちは焼ける樟樹くすのきであった

いま あの山は まっ黒で

その上に ぎりぎりと オリオン星がかがやいている

じっとこうして背嚢はいのうにもたれて

地べたの上でいきづいていたものだ

またもや風がきて雨をおれたちの顔にかけていった