青空文庫ビューアー

砂上の低唱

砂上の低唱

漢那 浪笛

満つと見しこの天地あまつちは足ずありぬ心を

いづちやるも空虚うゐのみ

海のしめる暁を

今日片時の浜下り

磯の霞に酔ひしれて

哀れ吾が世の夢に泣く

浪路逢かた見渡たして

満潮時を恨み泣く

千鳥の声に胸冷えて

哀れ吾が世の夢に泣く

花葉かざれる海の底

そや湧きかへる黒潮は

憂しや吾が身の宿世にて

哀れ吾が世の夢に泣く

足跡しげき砂の上

深かき想ひに眼を閉ちて

世の運命を思へば

哀れ吾が世の夢に泣く

悲哀の盃を受けし身は

日に日に琴柱折りふして

只だ空鳴りに物狂ひ

哀れ吾が世の夢に泣く

さらばとうたの神を追ひ

花園の影に身をよせて

詩の車を手に繰るも

哀れ吾が世の夢に泣く