青空文庫ビューアー

末吉 安持

神無月かみなづき、日は淡々あは/\

夕ぐれの雲ににほへば、

眼路めぢひくき彼方かなたうす

あはれなる遠樹えんじゆぞ見ゆる。

あぜをゆくまだらの牛と

黄牛あめうしは声もものうく、

今は皆しおきには

がれ紅く伏しなむ、

かく思ひ定めし如く

とぼとぼと霧にまぎれぬ。

素枯野すがれののあなた、沼尻ぬじりの、

をぎすすき折れ伏す所、

ああ如何に髑髏どくろを洗ふ

冬の水音して落ちむ。

ひえひえと身に泌む寒さ、

われは今いづこ歩むや、

ふと思ふ、ああ人の世も

ここにして終極はてにかあらむ。

下り坂をぐらくなりて

見るかぎり煙うづまく。