青空文庫ビューアー

夏の日

夏の日

末吉 安持

真夏まなつひる片日向かたひなた

苔すこしひぢばみ青む捨石すていしに、

鳩酢草はとかたばみ呼吸いきほそしずく湿うる

ちぬ、かつ喘息あへぎつゝ。

そのかみれにちひさなる

さがて、またなれひて、その熟実うみみ

かつこぼし、かつちて、

いづかた精進さうじたまぞ。

鳩酢草はとかたばみはえも知らず、

捨石すていしに。――小雨こさめのあとのかぜいきれ、

木々きゞみなぬとにはに、ひとりしづか

おほどかにゆめに入るさま。

蚊帳かやめぐれる名香みやうかうに、

手枕たまくらもひたせて病める身の

横臥よこふしぬ。心こそ、鳩酢草はとかたばみ

たましひにさながら似たれ。

かぜまたくゆ小雨こさめしぬ。

鳩酢草はとかたばみも、一日ひとひ

天地あめつち幸福さいはひありき。