青空文庫ビューアー

茴香

茴香

末吉 安持

ながつき下浣すゑの日のゆふべ、

山下やました岩根いはね垂る水の

玉のしづくにさねぐみて、

かつみこぼしいはひつゝ、

かぜぬかづく茴香うひきやう

あゝ姉妹おとゞびの二人もとよ。

化石くわせきもすらむあき

骨立ほねだごは呼吸いきつまり、

天つ御法みのりのおん宣告つげに、

ねては、はぢも葉こそれ、

孕婦はらみめながら茴香うひきやう

優婆夷うばゐか、なやいろもなし

つれにはぐれし赤蟻あかあり

ゑてゆむ湿しめに、

あはれがおのおとどひは

くもなよらにぬかづきて、

手弱腕たよわがひなにそと乗せつ、

弘誓ぐせいもさこそ、あゝ茴香うひきやう