青空文庫ビューアー

高館

高館

森川 義信

高館に登りて見れば

小糠雨烟りて寒く

朽ちかけし家のほとりの

高き木に鳴く蝉かなし

苔かほる古き木に倚り

その昔の人をしのべど

木々に吹く風も寂しく

消えて行く思ひ儚し

遠山の淡くけむりて

北上は北の果より

その昔の夢を語らず

うね/\とうねりて流る

故郷を遠くはなれて

旅に見る夢跡かなし

生ひ繁る草木の緑

高館に吹く風寒し