青空文庫ビューアー

あの人

あの人

森川 義信

芹をつむ芹の沼べり

今日もまためだかが浮いた

肩あげの肩が細いと

あの人はやさしく言つた

名も知らぬ小鳥が鳴いた

讃岐の山雲が通つた

あの人は麦笛ふいた

泪ぐみ昼月つきみて聴いた

肩あげの肩も抱かずに

あの人は黙つてつた

芹かごの芹のかほりが

しんしんと胸に沈んだ