青空文庫ビューアー

勾配

勾配

森川 義信

非望のきはみ

非望のいのち

はげしく一つのものに向つて

誰がこの階段をおりていつたか

時空をこえて屹立する地平をのぞんで

そこに立てば

かきむしるやうに悲風はつんざき

季節はすでに終りであつた

たかだかと欲望の精神に

はたして時は

噴水や花を象眼し

光彩の地平をもちあげたか

清純なものばかりを打ちくだいて

なにゆえにここまで来たのか

だがみよ

きびしく勾配に根をささへ

ふとした流れの凹みから雑草のかげから

いくつもの道ははじまつてゐるのだ