青空文庫ビューアー

季節抄

季節抄

森川 義信

ローマ数字1、1-13-21

梢が

空にとどいてゐる

美しい樹々よ

花の咲かない…………

花はなくとも

ああ せめてものわが願い

ローマ数字2、1-13-22

樹々の編む

光りのハンモツクに

僕はつつましく腰をおろす

風が静かにひかるとき

ゆれないハンモツクで

僕はそつと時間をみ失ふ

ローマ数字3、1-13-23

小さな口をあけて

ぽくぽくと駆けてくる

波頭よ

さうして

何も彼も洗ふがいい…………

貝殻の中の小さな海にも

冷い空が

匂ふやうに光る

ローマ数字4、1-13-24

青い塔の半円形も消え

匂ひの向ふへ花がこぼれた

重たい風船のやうに暗い秋の陽が

落ちてしまつて…………

ひと掬ひの歌もない

海よ

貨物船よりもぢつとして

お前を視てゐる僕

(〈13年〉十一月讃岐にて)