青空文庫ビューアー

あるるかんの死

あるるかんの死

森川 義信

眠れ やはらかに青む化粧鏡のまへで

もはやおまへのために鼓動する音はなく

あの帽子の尖塔もしぼみ

煌めく七色の床は消えた

哀しく魂の溶けてゆくなかでは

とび歩く軽い足どりも

不意に身をひるがへすこともあるまい

にじんだ頬紅のほとりから血のいろが失せて

疲れのやうに羞んだまま

おまへは何も語らない

あるるかんよ

空しい喝采を想ひださぬがいい

いつまでも耳や肩にのこるものが

あつただらうか

眠るがいい

やはらかに青む化粧鏡のなかに

死んだおまへの姿を

誰かがぢつと見てゐるだらう