青空文庫ビューアー

哀歌

哀歌

森川 義信

枝を折るのは誰だらう

あはただしく飛びたつ影は何であらう

ふかい吃水のほとりから

そこここの傷痕から

ながれるものは流れつくし

かつてあつたままに暮れていつた

いちどゆけばもはや帰れない

歩みゆくものの遅速に

思ひをひそめ

想ひのかぎりをこめ

いくたびこの頂に立つたことか

しづかな推移に照り翳り

風影はどこまで暮れてゆくのか

みづから哀しみを捉へて佇むと

ふと

こころの佗しい断面から

わたしのなかから

風がおこり

その風は

何を貫いて吹くのであらう