青空文庫ビューアー

善夫孤独

善夫孤独

金 鍾漢

下関でうつた電報から ひねもす

朝鮮漬キムチのにほひがしてならない

そして 貴公はやつてきた

ムカヘニコナイトマヒゴニナルゾ

そして 貴公はやつてきた

天下大将軍チヤンスンのやうな顔をして

そして 貴公はやつてきた

ぶあつい手を にゆつとつき出した

そして 私は案内した

天神の鳩に豆をやつた

ふたりの背に 陽ざしがあたたかく

幼年の日が そこにあつた

そして 私は案内した

とんかつやの ふるぼけた暖簾のれんをくぐると

ふるさとの淳朴な風俗が

郷愁のやうに 湯気をたてて流れた

そして 貴公は帰つていつた