青空文庫ビューアー

祈祷

祈祷

萩原 朔太郎

黄菊はすでに散つてしまつた

漕手よ

船路を遠くかへつてくる時

さびしい海鳥はますとに飛びかひ

日は憂鬱の浪にただよふ。

漕手よ

はや君の家の窓に燈火あかりはつけられ

妹はひとり庭にたたずむ

漕手よ、祈祷せよ。