青空文庫ビューアー

眺望する

眺望する

萩原 朔太郎

すべては黒く凍つてゐる

さびしくかたまる岩の上に

みじめに歪んだ松の幹に

景色は凍え、飢ゑ、まづしく光つて叫ぶばかり。

この侘しく灰色なる空の下に

私たちの心はまづしく語り 孤獨になやみて重たくよりそふ

少女よ

あの遠い空の雷鳴をあなたは聽くか

かしこの空にひるがへる

浪浪の高いひびきをあなたは聽くか。

過去よ

ながいながい孤獨の影よ

その影を岩にひきずる

冬の日の薄暗い濱邊に立つて

意味のふかい人生を見る。