青空文庫ビューアー

竹の根の先を掘るひと

竹の根の先を掘るひと

萩原 朔太郎

病氣はげしくなり

いよいよ哀しくなり

三日月空にくもり

病人の患部に竹が生え

肩にも生え

手にも生え

腰からしたにもそれが生え

ゆびのさきから根がけぶり

根には纖毛がもえいで

血管の巣は身體いちめんなり

ああ巣がしめやかにかすみかけ

しぜんに哀しみふかくなりて憔悴れさせ

絹糸のごとく毛が光り

ますます鋭どくして耐へられず

つひにすつぱだかとなつてしまひ

竹の根にすがりつき、すがりつき

かなしみ心頭にさけび

いよいよいよいよ竹の根の先を掘り。