青空文庫ビューアー

冬を待つひと

冬を待つひと

萩原 朔太郎

こほれる利根のみなかみに、

ひねもす銀の針を垂れ、

しづかに水に針を垂れ、

さしぐみきたる冬を待つ。

ああ、その空さへもうすくもり、

かみつけの山に雪くれば、

魚らひそかに針をのみ、

ま芝は霜にいろづけど、

ひとり岸邊に針を垂れ、

來らむとする冬を待つ。