青空文庫ビューアー

暮春詠嘆調

暮春詠嘆調

萩原 朔太郎

   ×

年ひさしくなりぬれば

すべてのことを忘れはてたり

むざんなる哉

かばかりのもよほしにさへ

涙も今はみなもとをば忘れたり

   ×

人目を忍びて何處いづこに行かん

感ずれば我が身も老いたり

さんさんと柳の葉は落ち來る

駒下駄の鼻緒の上に落日は白くつめたし