青空文庫ビューアー

古盃

古盃

萩原 朔太郎

小人若うて道にんじ

走りて隱者を得しが如く

今われ山路の歸さ來つつ

木蔭にかたよき汝をえたり。

表面おもては蛟龍雲をいて

神有じんうの祕密をそめて見るや

裏面うらには伶人ぬかをたれて

物思ものもひ煩ふなよび姿

才華悧悧たるまなざしには

工匠たくみうらみもこもりけんよ。

こは君逸品いつぴん古色ありと

抱いて歸れば有情なりや

味よきしづくの淺紫せんしなるに

け高き千古の春を知りぬ。