青空文庫ビューアー

大江満雄に

大江満雄に

槙村 浩

こゝに機械の哲学者がある―――

彼は思考し、血潮の中に機械のどよめきをでなく、血潮と共に脈動する機械のリズムを感ずる

彼ははつらつたる工場の諧調を背負うて、齟齬しながら鈍重に歩いて行く

こゝに機械の哲学者がある―――

彼は技師を宣言し、一切に正面照明を送る

照明はゆかいに大大阪を漫歩する

機械にまで虚偽を造る資本の虚偽と、百万の労働の精神とを透過し

浮揚する二重性をもって、飢えた子供の胃のレントゲン絵にまで照入する

こゝに機械の哲学者がある―――

たしかに彼は巧みな限りにおいて危う気なく進む

だがわたしらをして提議せしめよ―――

現実を後にでなく

前に置こう!

前方をして常にかちうべき真実の生産であらしめよ!