青空文庫ビューアー

新美 南吉

熊は月夜に声きいた。

どこか遠くでよんでゐた。

熊はむくりと起きて来た。

檻の鉄棒ひえてゐた。

熊は耳をばすましてた。

アイヌのやうな声だつた。

熊は故郷を思つてた。

落葉松林からまつばやしを思つてた。

熊はおゝんとほえてみた。

どこか遠くで、

こだました。