青空文庫ビューアー

たまごとおつきさま

たまごとおつきさま

村山 籌子

 むかし、のはらの一けんやに、にはとりが一羽すんでゐました。そののはらのむかふには、ひくい、きれいな山が三つならんで立つてゐました。

 ある、月のいゝばんのこと、そのにはとりが、玉子を一つうみました。そのたまごに、丁度のぼつてきた月が、光りをさしかけましたので、たまごは、それは美くしくて、しんじゆのたまのやうに見えました。

 にはとりはうれしくてたまらないので、玉子ばかり見てゐました。けれども、そのうちに、玉子は、だん/\消えていつて、かげばかりになり、おしまひには、そのかげさへも見えなくなつてしまひました。

 ぼんやり、それを見てゐたにはとりは、たいへんびつくりして、おつきさまのところへかけて行つて、

「おつきさま、どうぞ、わたしのたまごを、かへしてください。」とたのみました。

 すると、こんどは、きふに、おつきさまがわらひながら、だん/\しぼんで、たまごになつてしまひました。

 にはとりは、たいへんよろこんで、

「ほんとですか、おつきさま、これがわたしのたまごですか。」といつて、それを羽の下に入れようとしますと、それが、見る間に大きくふくれて、三つならんだやまのむかふから、おつきさまになつてのぼつてきました。

 あくるあさ、にはとりが目をさまして、のはらにいつてみますと、まへのばんのおつきさまが、しろくすきとほつて、空にのぼつてゐました。そこで、にはとりはおほきいこゑでなきました。

「それは、たまごか? おつきさまか? コケツ、コケツ。」