青空文庫ビューアー

おびえ

おびえ

漢那 浪笛

咲きしはなはしぼみて、

わが世はくらがりわたり。

くろめる渦巻きのなか

淋しき、うめきをやする。

そは、つめたき砂のうへに裂けて、

風に泣く片葉□貝にも似たり。

絶えせぬ浪の響き、肉にゆさぶれば、

小さき魂は、音なく伏してあるなり。

「なほ生きてあるのみ」

いつかまた、われは哀ふ。

と思へば、あたりのものみな、

怖ろしく眼にとまる。

かつて、命をすてゝ去る人あるを聞けど

あまりにかへる日の遠し…………。

われは今、かのひからびし落葉の如く

地の上を、あてなく転げて、

冷やかに尚ほ生きてあるのみ。